平成18年、金沢文庫に保管する「称名寺聖教」13,027点が重要文化財に指定されました。「聖教(しょうぎょう)」とは、僧侶によって書写・収集された仏教の書物全体をさす言葉で、写本・版本・巻物・冊子など、その形はさまざまですが、中世の大寺院に属する学僧たちが営々と積み重ねてきた学問の姿を今日に伝える重要な文化遺産です。
鎌倉時代まで、学問(学文)という言葉は、まず仏教寺院で行われた読書・講義・書写活動を示しました。称名寺聖教の大きな特徴は、鎌倉およびその周辺で行われた学問の様相を今に伝えることです。鎌倉・金沢を中心に、書物の奥書に残る全国各地の地名は、中世社会の中で幅広く展開した学僧たちのネットワークが存在したことを示しています。
称名寺聖教に対しては、現代のさまざまな分野の学界から熱い視線が注がれています。このたび、重要文化財に指定されたことをきっかけにして、その全貌が明らかになり、さらに研究が進めば、これまで謎のベールに包まれていた鎌倉を中心にした中世の学問の様相が浮かびあがってくるものと思われます。
今回の記念展では、称名寺聖教の特徴を示すさまざまな資料を選び出し、全体像を一覧するとともに、その面白さの一端にふれていただきます。
展示の構成
1.顕教の仏典
2.戒律の学問
3.密教の伝授
4.鎌倉仏教の胎動
5.指図に残る中世の寺院
6.図像と声明
7.唱導資料と仏教説話
8.供養と表白
9.外典と実用書
10.学僧たちの足跡