志村ふくみさんは大正13年(1924年)9月30日に現在の近江八幡市に生まれました。紬織りと染織の優れた技術によって知られ、平成2年(1990年)に紬織の重要無形文化財(人間国宝)の認定を受けました。志村さんは現在もとどまることなく新たな作品制作に励まれ、近年では紬織り着物の制作だけにとどまらず、端切れを用いた現代的なコラージュ作品へ新たに挑戦したりするなど、80歳を超えられた現在でも創作活動を楽しみながら新たな世界を切り開いておられます。
志村ふくみさんが織り成す紬織り作品は色彩がとても豊かで、その一色一色が、実に冴え渡る深みを伴った染め色であると言えます。それは、季節をとおして自然界の植物から採取して、作家自身が丹念に絹糸に移しかえた魅力的な色彩のハーモニーでもあります。
当館は100点以上のもの志村ふくみ作品を所蔵しており、この展覧会ではこれまでの作家の歩みとともにさまざまな作品や多くの資料を紹介することで、その作品の変遷をつぶさに鑑賞いただけ、また志村芸術をよりいっそう楽しんでいただけるでしょう。
本展では日本伝統工芸展や個展で発表されてきた昭和34年(1959年)から平成16年(2004)までの代表的な着物作品のほか、帯揚げや帯締めなどの小物、屏風や帖仕立ての端切れによるコラージュ、裂帖、豊かな色合いを示す絹の色糸など多くの作品を展示します。なお会期中には展示替えを行います。
本展は、志村ふくみさんの豊かな作品世界を、当館の所蔵品によりあますところなく紹介する貴重な機会となります。この機会に、皆様ぜひご観覧ください。