「こどものころからえがすきだったいのくまさん おもしろいえをいっぱいかいた」(絵本『いのくまさん』より一部引用 絵・猪熊弦一郎、文・谷川俊太郎、2006年3月小学館発行)。この言葉の通り、猪熊弦一郎の一生は好きな絵を描き続けた人生だったと言っても過言ではありません。本展では、4メートルにも及ぶ大きなカンヴァスの作品から小さなメモ用紙に描かれた猫の絵にいたるまで、絵を描く喜びにあふれた猪熊作品の数々を絵本『いのくまさん』の内容に沿って展観します。独特の「顔」「鳥」「猫」といったモチーフから「色」や「形」というテーマまで、詩人の谷川俊太郎による単純明快な文章に導かれ次から次へと現れる作品群は、猪熊のつきることのない制作への意欲を示すとともに、展示室全体に一つの芸術空間を作り出します。また、絵本で見た作品と直に対面するとき、誰もがその大きさに驚き、色彩や筆致の迫力に触れ、作品のみならず画家の存在をより強く感じるに違いありません。絵本の最後の言葉は「いのくまさんはたのしいな」。見る人を誘い込む、楽しい猪熊ワールドを堪能できる機会となれば幸いです。
*期間中、作品の一部を変更します。
(前期:1月1日-2月25日、後期:2月27日-4月15日