クレパスという画材は誰でも知っているはずです。
学校教育などでも教材として採りいれられているので、子どもの頃、お絵かきや図画工作が嫌いだった人でも、何度かは使って絵を描いたことがあったのではないでしょうか。
たとえば水彩画を制作しようとなると、とりかかるまでに絵具にパレット、筆に水…と、ひととおりの準備をしなければなりませんし、まして油彩画となると、材料を使いこなして作品を完成するためには、専門的な道具を用意して、そのためのたいへんな高度な知識と技能を修得しなければなりません。その点クレパス画ならば、紙さえあれば誰でもすぐにはじめることができます。絵具が乾くのを待つ必要がないので一点の制作に何日も要するということはありません。たしかにクレパスは簡便手軽、色鉛筆やマーカーのように、最も身近な画材の一つです。大人になって絵なんか描かなくなっちゃった、という皆さんはきっとクレパスのことを、子どもたちが使う素朴な絵の道具、というぐらいのお考えなのではないでしょうか。
意外に思われるかもしれませんが、クレパス(Oil Pastel)、クレヨン(Crayon)、パステル(Pastel)は、かたちが棒状で見かけが似ているけれど違う物です。クレパスは、クレヨンとパステルのそれぞれの長所を兼ね備えた新しい画材として大正14年に世に送り出された、日本独自の発明品なのです。
本展は、サクラアートミュージアム(大阪府)が所蔵するコレクションを中心に、近代日本の洋画史を彩った巨匠たちから現代の画壇を担う名手たちにいたる、クレパス画約150点を展示します。
たかがクレパスとあなどるなかれ。プロが使えばここまで描ける。
皆さんきっと驚かれるに違いありません。