文化財には有形と無形の二種類があります。有形文化財は絵画、工芸や出土品のように文字どおり形のあるもの。これに対して無形文化財は、能や歌舞伎、雅楽といった演劇や音楽のように、それ自体が形をもたないものです。伝統工芸を作る技も、そうした無形文化財の重要な分野のひとつとなっています。
日本の伝統的な工芸は長い歴史の中で生れてきた優れた技によって作られています。こうした技を後世に伝えていくために、昭和二十年代末から三十年代にかけて国によって工芸技術の記録保存が行われてきました。今回は記録保存によって作られた工程見本などを手がかりとして陶磁、漆工、金工など、さまざまな分野の伝統の技の世界を探ります。