文明開化の象徴として、明治初期に東京や大阪で多くの新聞が欧米に倣って発刊されましたが、広範囲への普及には至っていませんでした。そうした中にあって、一般大衆に親しみ易い市井の記事を色鮮やかな錦絵に配して刷りあげた「新聞錦絵」は、1874年(明治7)年、東京において「東京日々新聞大錦」が創刊されるや否や大変な人気を呼び、相次いで多くの「新聞錦絵」が発刊されています。そして翌年には、早くも大阪でも多くの「錦絵新聞」が刊行され、明治の錦絵界に新聞記事をもとにした「新聞錦絵」(東京)や投書を含めた独自取材による「錦絵新聞」(大阪)が一ジャンルとして隆盛をみせています。
紙面の内容は、記事文章とともに赤また紫と極彩色の画面枠や、精一杯西洋風に努めた天使が支える題字ロゴタイプ、明確な空間構成、題材となった情痴を中心とする男女の振舞いが中心となっています。
因みに大阪での「錦絵新聞」の中心的な絵師としては、歌川派の笹木芳瀧と長谷川派の二代貞信らが活躍しています。
浮世絵の伝統を受け継ぎ、やがては新聞挿絵へと移行していくこの錦絵新聞は、明治という時代が文明開化を生み、新聞の勃興を促す一助として、束の間に開花した世俗芸術ともいえます。
本展は、大阪城天守閣ご所蔵「南木コレクション」を中心に、明治大阪の「錦絵新聞」を展示し、江戸時代と明治の文明開化が微妙にクロスした明治期の大阪でのヴィジュアル・ジャーナリズムの世界を紹介するものです。