コレクターであり、美術評論家であり、制作者であり、銀行員であった砂盃富男のコレクションを紹介します。「みる眼」と「その気」を継続しつづけた40年におよぶ成果です。
戦争惨禍にたいする美術やシュルレアリスムにつよい関心をもつコレクションは、迷宮的/幻想的なイメージをたたえたものです。作品を追い求める行動力、作家にむける旺盛な好奇心、それらの渦巻く想いがコレクションとして結実しました。
あるときは、クリストの梱包イベントのためにベルリンに旅立ち、またあるときは松沢宥のアトリエ「プサイの部屋」に入りました。三木富雄の《耳》はジャスパー・ジョーンズから危うく守られ、瀧口修造ばりのデカルコマニーを制作していました。ピカソ、コルヴィッツ、サビエの戦争を思い、ヴォルス、マッタの精神の内奥に魅せられたのです。
美術品は広く公開するものであるという考えから、前橋の自宅を改装して「ベル・イマージュ・ミューゼアム」という、小さいながらも美術館を実際につくりました。窪島誠一郎のことばに、「人はこころのなかにひとつづつの美術館がある」とあります。コレクター砂盃富男が自らの美術館で見ようとした20世紀美術とはどのようなものだったのでしょうか。400点を越える版画を中心とし、質量ともに充実したこれほどの個人コレクションは、ほかに類をみない貴重なものです。本展はその中から、国内外の20世紀以降の作品約130点を選んで展示します。