彫刻家・大野公士が一貫してその作品のモチーフとしているのは「人間の肉体」です。彼は、よりリアルな肉体を木彫によって表現するために、技術的な鍛練を重ねるだけではなく、医大の解剖学研究室に研究生として籍を置きながら、人体の構造を解剖学的な見地からも学んできました。? その制作プロセスも極めて独創的です。外側から緻密に彫られた等身大の肉体は、切断したうえで、内部をくり抜いていきます。あたかも肉体を包む皮膚をなぞるように薄く彫り上げられた造形は、その緊張感によって、はかなくも力強い存在感を放ちます。さらに、完成した肉体を金属で組んだフレームのなかに浮かせ、人間が必要とする最低限の空間を区切ることで、肉体の内部に潜む「精神」の存在さえも浮き彫りにするのです。? 展覧会『啓示 The?Revelation』において彼は、現代における「神の啓示」をテーマとして選びました。? 「今、世界では神の『啓示』を受けた民族が互いに傷つけあっている。一体人類はいつから神を必要とし、規律を必要としてきたのだろうか?」? そう自問する大野公士は、特定の神の世界ではなく、人間が古来よりごく自然に感じていたはずの神秘的な存在を感覚的にとらえようとしています。? 「人間は、『神』という存在を創り上げる前から、超自然的な現象や死との関係に独特な感性を持っていた。人間の一方的な都合で存在させる神ではなく、人智の及ばない物事を認識させてくれるのがはたして『神』であるかを意識してみたい」? 震災と戦災をくぐりぬけ奇跡的に生き残った空間が醸す時の重みのなかに、大野公士自身初めての試みとなる小型作品など新作7点によって空間を構成し、『啓示 The?Revelation』の世界を実現します。? 11月23日(祝)には大野の人体彫刻とダンサー、尺八奏者との共演によるパフォーマンスを開催(有料/要予約)。