北海道松前町出身の書家・金子鴎亭(1906-2001)の生誕100年を記念して、その書業を回顧します。
金子鴎亭は1921(大正10)年札幌鉄道教習所に入学し、大塚鶴洞に書の指導を受けました。さらに24(同13)年『書之研究』誌により谷川尚亭に師事。29(昭和4)年札幌で比田井天来に出会い、本格的に書を研究するため32(同7)年に上京します。天来に師事しながら古典の学習に励み、『書之研究』誌に「新調和体」論等を発表するなど、新しい書のあり方を追及しました。
戦後48(同23)年に毎日書道展(毎日新聞社主催)を開催、54(同29)年には鴎亭の提唱した「近代詩文」が独立部門となります。64(同39)年創玄書道会を設立。毎日書道展、創玄展、日展等を主な作品発表の場とし、意欲的に書作活動に取り組みます。52(同27)年からは毎年全国戦没者追悼之標(同50年より全国戦没者之霊)を揮毫。86(同61)年北海道道立函館美術館開館にあたって自作と所蔵品等を寄贈し、館には鴎亭記念室が設けられました。87(同62)年文化功労者に選ばれ、90(平成2)年文化勲章を受章。2001(同13)年95歳で逝去するまで、終生、書の研究と後進の育成に尽力しました。
本展では、北海道立函館美術館の所蔵品を中心として初期から晩年までの代表作約130点をたどりながら鴎亭が確立した「近代詩文書」の世界を探るとともに、様々な関連資料によって現代書の創造に生きた鴎亭の生涯をご紹介します。