山本正文は、1947(昭和22)年、山梨県中巨摩郡櫛形町(現、南アルプス市)に生まれました。大学卒業と同時に渡仏し、約1年のパリ滞在を経て、1971年、スペインのバルセロナに渡ります。芸術都市特有のエネルギッシュな都市空間に魅了された山本は、以降ミロやピカソ、ダリといったスペインが誇る20世紀の巨匠を輩出したこの地で、35年に及ぶ創作活動を続けています。
山本は、バルセロナ工芸応用美術学校版画科でリトグラフとエッチングを学んだ後、1979年に自ら版画工房を立ち上げます。彼の高度な版画技術を求めて、ラフォルス・カサマダやジョアン・エルナンデス・ピジュアンといったバルセロナの現代作家や、スペイン内外の国際的にも著名な作家たちが多く訪れ、版画制作の協力を依頼されるようになりました。工房の仕事を通して山本はまた、版画作家としても成熟していきます。
1980年代後半、山本版画工房及び作家山本正文の評価はさらに高まり、メキシコのルフィーノ・タマヨ美術館やディエゴ・リベラ美術館、メキシコ国立版画美術館において、山本版画工房展及び山本正文展が大規模に開催されました。また、ジョアン・ブロッサ、イヴ・ボンヌフォアといった国際的な詩人とともに多くの詩画集を制作し、高い評価を得ています。さらに1980年代後半からは、鉄による彫刻作品の制作にも取り組んでいます。
本展は、版画、彫刻、詩画集、ミクストメディアによるタブロー作品など多岐にわたる作品の中から、代表作およそ300点を展示することで、バルセロナにおける山本の創作活動の全貌を紹介するものです。