「待てど 暮らせど 来ぬ人を♪」で始まる「宵待草」の甘く切ないメロディーは、今なお多くの人々に愛されています。竹久夢二(1884-1934)は「夢二式美人」と呼ばれる独特の美人風俗画で有名ですが、この「宵待草」をはじめ生涯に〈セノオ楽譜シリーズ〉の24曲の作詞を手掛けました。「宵待草」は、大正7年のセノオ楽譜発売以来版を重ねて、〈流行歌〉の先駆とも位置付けられています。
夢二の活躍した大正期は、蓄音器の輸入・改良に伴ったレコード産業の誕生により、〈音楽〉が広く大衆化された時代です。加えて、音楽雑誌や楽譜の発行を通じて多くの人々が西洋音楽に親しみ、又、キネマやダンスといった〈音楽〉に縁の深い娯楽が次々と登場しました。本展覧会では、セノオ楽譜・セノオ新小唄・童謡曲譜など夢二のデザインした楽譜装幀を中心に、併せて大正期の音楽事情を幅広くご紹介します。