中国江西省にある景徳鎮は、世界的な磁器の生産地として知られています。唐末五代(10世紀)には青磁や白磁の生産が始まり、北宋時代の景徳元年(1004)年に、年号を冠した景徳鎮の名がこの地に与えられました。明・清時代には、宮廷のためだけに陶磁器を焼造する官窯がここに置かれ、その華麗な白磁、青花(染付)、五彩などの官窯磁器は今日でも高い評価を得ています。
そして文化大革命末期の1975年、中国革命の最高指導者、毛沢東(1893-1976)主席専用の日常使いの器が景徳鎮で焼かれました。
中央政府より最高水準の器を至急つくるよう景徳鎮の選りすぐりの職人たちと最良の材料が集められ、「玉のように白く、鏡のように明るく、音は磬のように」を製作の目標に研究が重ねられました。その年の第一級の任務という意味を込めて「7501工程」と呼ばれたこの計画は、ついに1400度の高温焼成による美しい磁器を完成させました。完成品のうち約1千点余りが毛沢東の住む北京に送られ、中央政府より残りはすべて破棄するよう指示がありました。しかし製作にかかわった人々は、破損して再注文が来ても同じ水準の物は二度と作れないと考えて密かに保管し、それらは毛沢東の没後、関係者に配られました。その製品は近年「最後の官窯」「現代の官窯」と人々に評されるほど、中国国内でも注目されつつあります。
本展では、景徳鎮磁器の変遷を、宋時代の青磁器や明・清時代の歴代の官窯製品、そして日本では初公開となる「7501工程」の食器や文具など合計130件でたどり、およそ千年にわたり窯の火を絶やすことなく活動し続ける、景徳鎮の現代に至る姿を紹介します。