私たちは、すでに日本画と洋画というジャンル分けに慣れてしまい、そもそも日本画とはなにか、洋画とはなにかという問いかけすらしなくなっています。この展覧会は、日本の近代絵画にとって日本画・洋画とは何だったかを、改めて歴史的に問い直そうとするものです。そのためには、日本画・洋画というジャンル概念を自明なものとはせず、両者の〈はざまに位置する〉作品あるいは作家に注目していく必要があります。そうすることによって、日本画と洋画の問題を浮かび上がらせ、近代絵画じたいをも再考する機会にしたいと考えています。
日本画と洋画の並存という、100年以上にわたって続いてきた近代日本に特有な美術状況を見直すことは、ひいては、「近代」「日本」「美術」を問い直すことに通じます。また、そうした概念上の問題と同時に、この展覧会では、作家個々人にとっての日本画・洋画の存在理由を検証し、あわせて実制作上の問題も取り上げていきます。矛盾や葛藤を含んだ制作の現場から生み出された、ジャンルを超えた表現に、これまで見過ごされていた近代日本美術の新たな可能性を探りたいと思います。