水泳、テニス、ゴルフ、サッカー、野球、スキー…。スポーツは、コンマ一秒の記録を競う競技として、健康を保つための手段として、そして私たちの生活に楽しみをもたらすレジャーとして、ひろく親しまれています。スポーツが一般に普及し始めたのは、わずか100年ほど前のこと。西洋において、乗馬や狩猟などのスポーツは長らく上流階級の特権であり、無駄にエネルギーを消費するこうした行為は、庶民には縁遠いものでした。19世紀末から20世紀初めにかけて、西ヨーロッパでは、交通網の整備とともにリゾート地の開発が進み、一般市民の間に、テニス、ゴルフなどの球技、水泳などの水辺のスポーツ、そしてスキーなどのウィンタースポーツなどがひろまります。
19世紀半ば以降、乗馬等を行う際に着られた服は、機能面から見た場合、通常の服と同じようなものでした。身体の動きを妨げない機能的な服は、まず教育の場において導入されました。そして、19世紀後半にはサイクリングと水浴のためのウェアが、スポーツウェアとしてはっきりとした特徴を持つようになります。続いて、テニスやスキーなどの特定の運動のためにあつらえられたスポーツウェアがつくられるようになりました。スポーツは、スポーツウェアとともに新しい時代のライフスタイルを象徴する事柄として、ファッション雑誌だけでなく、新聞等のメディアにおいて繰り返し紹介されています。
スポーツウェアの機能性を重視した簡素なスタイルは、一般のモードにおいても取り入れられました。こうした新しい美意識は、シャネルをはじめ、クレージュやガーンライヒなど数多くのデザイナーによるドレスにみとめられます。スポーツウェアは、また着る人の身体のラインをあらわにしていきますが、ここでクローズアップされたのは、健康と若さに満ちた「新しい身体」でした。
今回の展覧会では、そうした美しい美意識が反映された、スポーツウェアなどの衣装、版画、写真100点が紹介されます。石見美術館だけで開催される展覧会です。お見逃しなく!