アルベルト・ジャコメッティ(1901-1966)はスイスに生まれ、おもにパリを舞台に活躍した20世紀の偉大な彫刻家です。目に見えるものを見えるとおりに表すという、単純にして困難な哲学的命題に挑み続けた彼は、対象とそれを取り巻く空間の実質的な再生を極限まで追及しました。パリのアルベルト&アネット・ジャコメッティ財団との共催により実現した本展は、画家の父のもとで卓越した技術を身につけた少年期の絵画から、キュビスムやシュルレアリスムの彫刻家として脚光を浴びた青年期の作品、細長い人体彫刻に代表される壮年期の個性的な作品まで約140点で、ジャコメッティの生涯にわたる業績を展観します。なかでも見どころは、ジャコメッティとの強い友情から1956~61年にかけて毎年のようにパリを訪れ、忍耐強くモデルを務めた哲学者、矢内原伊作(1918-1989)との交流を示すセクションです。初公開となる矢内原の石膏像をはじめ、写真や手紙などの貴重な資料が展示されるほか、矢内原が生前にジャコメッティから贈られた作品も一同に集められました。この機会にぜひ、ご高覧ください。