藤本由紀夫(1950-)は「音」という目には見えない素材をもちいて表現を行う作家です。
私たちは普段、「目」と「耳」から受けとる「像」と「音」をたよりに暮らしていますが、「音」を意識することはあまりありません。藤本は、聞こえていながら流れ過ぎる「音」の仕組みや性質に着目し、「聞くこと」と「見ること」の共通と違い、また、ふたつを合わせたときに感じられることがらを明らかにする体験をもたらす作品を制作しています。見ることが、世界のほんの一部しか知らせていないこと。藤本の作品は、そのことに私たちを気づかせてくれます。
藤本は、今日の日本を代表する作家として2001年の第49回ベネチア・ビエンナーレで日本館代表となりました。本展は、藤本の生地である名古屋で開催される初めての個展であり、初期作から近作を含めてその活動を紹介します。