『「日本名匠伝」は16人を選んだ。何が名匠であるか、人によって人選に差があるであろう。しかし、ぼくの選んだ16人は誰一人として名匠でない人はいないのである。ぼくに言わせれば16人全員に共通するのは、彼らの志向するものが、常に単純明解で直線的であるということである。いささかの迷いもない。自分の演ずるところに一分の隙もなく、また油断もなく、ただ一直線にその演ずるところに邁往する、その瞬間で彼らの芸が充実するのをぼくたちは見ることが出来るのである。』土門拳
「日本名匠伝」は、昭和41年から42年(1966~1967)にかけて、雑誌「太陽」に連載され、昭和49(1974)年に駸々堂出版から1冊の写真集となって刊行されました。
(文・草柳大蔵、構成装幀・田中一光、題字・棟方志功)
土門拳は、人物写真の傑作「風貌」シリーズを初期からずっと撮り続けていますが、土門拳57~58歳で取り組んだこの仕事は、その集大成と言えるものでしょう。
草柳大蔵氏が「17人目の名匠」と称した土門自身と、被写体であるそれぞれの「名匠」の、仕事にかける生き様が、写真の奥底から迫ってきます。
展示作品
勅使河原蒼風、升田幸三、水谷八重子、川端康成、棟方志功、松永安左衛門、
中村歌右衛門、黒田辰秋、古今亭志ん生、坂本繁二郎、斎藤秀雄、浜田庄司、
杉村春子、榊原仟、野村万蔵、坂田栄男