1864年、パリの刺繍品商の息子として生まれたリヴィエールがジャポニスムの洗礼を受けたのは、モンマルトルのロドルフ・サリのカフェ「シャ・ノワール」でした。当時「シャ・ノワール」には、芸術家や文化人、前衛知識人が多く出入りし、社会批判や政治談議が繰り広げられると同時に、芸術家たちの新しい作品発表の場となっていました。当時のメンバーには、ロートレックやスタンラン、オーリオルなどがいます。
そのリヴィエールが美術史上、特に重要な位置を占めるのは、木版画の復興と多色リトグラフの開発でした。日本美術商のサミュエル・ビングや林忠正とも交流し、熱心に日本美術の研究をしたリヴィエールは、葛飾北斎や歌川広重の浮世絵から色彩や構図、題材、表現の仕方を学びました。
リトグラフ集《エッフェル塔三十六景》は、その題名通り、北斎の《冨嶽三十六景》の影響下に制作されました。1888年から始まったエッフェル塔の建設階段を追って描かれています。当初は、木版画で製作を予定していましたが、2作品を木版で仕上げた後、より簡単かつ細部描写の可能なリトグラフに切り替えました。
今回は、ニューオータニ美術館の所蔵作品から《エッフェル塔三十六景》に加え、ジョルジュ・オーリオル、アンリ=シャルル・ゲラールのジャポニスム版画をご鑑賞いただきます。