笹雪模様の瀟洒な衣装をまとい、ゆっくりと身を屈め耳打ちする遊女。この堂々たる印象的な姿には、他の肉筆浮世絵にない存在感があります。宝永年間(1704~1711)頃、懐月堂安度は浅草諏訪町に工房を構え、五人の優れた門人を従えて数多くの肉筆浮世絵を制作しました。研ぎ澄まされた大胆な筆致と明快な彩色によって描き出された立美人図は、同時代のみならず後々の絵師にも大きな影響を与えました。このたび、江戸で一世を風靡した懐月堂派の作品17点を特集陳列いたします。まるで浅草にあった安度の工房に迷い込んだような感覚に襲われることでしょう。江戸の人々を魅了した懐月堂美人の揃い踏みを、ぜひご堪能ください。