頭、胸、銅、腕、手、脚-
美術家たちはしばしば、身体の一部だけを切り取って、
人間像を表してきました。
たとえば頭部。
とくに愛する人の頭部を身体の他の部分から
切り離す表現は、長く美術家たちに好まれてきました。
洗礼者ヨハネの首を持つサロメのすがたが示すように、
相手のもっともな大事な部分を
完全に自分の手の中に収めたい、という思いが、
こうした表現の原動力となっているのかもしれません。
あるいは手。
こちらは触れるやさしい感触を呼び覚ます手は、
やはり美術家たちの深い愛着の対象として、
しばしばクローズアップで描き出されます。
またはトルソ(頭部や腕、脚など身体の一部を省略して作られた作品)。
重要な部分が欠けているという欠陥感は、
かえってそこにないものを補おうとする
想像力を刺激します。
さらに、都市の孤独な生活の中で、
ふと自分の身体がばらばらになる恐怖に襲われる、
そんな感覚をとらえて表現した作品もあります。
この展覧会は、当館の所蔵品の中から選んだ
彫刻、写真、絵画など約25点によって、
「ばらばらになった身体」というテーマを
さまざまな角度からご紹介するものです。