花鳥画と聞いて皆さんはどんなイメージを思い浮かべるでしょうか?
花鳥画とは草花鳥虫、動物を描いた東洋画の総称です。中国では宋代初期に画題として確立し、日本では中国の花鳥画を摂取した室町時代以降、多くの作品が描かれてきました。
自然を深く愛し、生涯花鳥画を描き続けた日本画家、上松松篁は、1902年、京都市に生まれました。近代美人画の第一人者として偉業をなした上村松園を母親にもち、小さい頃から生き物が大好きだった松篁は自然と、花鳥画の世界へ入っていきます。19歳で美術工芸学校絵画科を卒業後、京都市立絵画専門学校に進むと同時に西山翠嶂に師事。
以来、帝展、新文展を舞台に伝統的な写生に根ざしながらも近代感覚溢れる花鳥画の世界を展開しました。
戦後は、新しい日本画の創造を目指して日展を離れ、新日本画団体「創造美術」(現在の
「創造会」)を結成し日本の美術界に大きな影響を与えますが、在野精神を貫く姿勢や美を追求する制作意欲は変わることなく、独自の造形世界を築きあげていきます。又、京都市立美術大学教授や日本芸術院会員なども歴任し、昭和59年には松園に続き親子二代の文化勲章受章者となっています。
本展は、奈良市内にある松伯美術館のご協力のもと、屏風、掛け軸を含め初期から晩年に至る代表作約60点を選抜し、80余年にわたる業績を辿ります。生き生きとした描写と緻密に計算された画面空間からは、穏やかな中にも心地よい緊張感を感じ取ることができ、日常生活では忘れがちな大切な何かを、そっと教えてくれているようです。
ぜひこの機会、松篁の美の世界に触れてみてはいかがでしょうか。