板津邦夫(1931-)は札幌に生まれ、東京芸術大学で石井鶴三に学びました。彫刻専攻科を修了後、北海道学芸大学旭川分校(現・北海道教育大学教育学部旭川校)に勤務し、1994年に定年退官するまで同校の後進の指導にあたってきました。
旭川着任による豊富な木材との出会いを契機として抽象木彫作品を手掛け始め、その数年後には早くも自由美術協会展において第1回自由美術賞を受賞するなど高い評価を得ています。2000年に退会するまで所属した自由美術協会の他、北海道美術協会展や純正美術会展を始めとした公募団体展、そして北海道の先鋭作家が紹介された「北の彫刻展」(札幌彫刻美術館)や「北海道現代美術展」、「北海道の美術」(ともに北海道立近代美術館)などでの作品発表を中心に、現在に至るまで活躍を続けてきました。
板津邦夫の木彫作品は抽象的な形態を採りながらも、自然現象や歳時といった身近な題材を主なモチーフとし、親しみやすく、ユーモラスな温かみに満ちたものとなっています。本展で紹介する版画作品にも、木彫作品と同義のものが見受けられます。自然や事物を時に記号化しながら象徴的に扱い、色面の構成によって軽妙で深い味わいを生み出しています。
本展では、木版画の近作を中心に、彫刻家・板津邦夫が織りなす版画世界をご覧いただきます。