本展は大津市在住の現代美術作家、中ハシ克シゲ(1955年 香川県生れ)が近年精力的に展開する、二種類のプロジェクトを紹介するものです。
ZERO Project(ゼロ・プロジェクト)は、特定のエピソードを持つ、主に零戦のプラモデルを詳細に接写した約25,000枚もの写真を貼りあわせ、実物大の戦闘機をつくりあげるもの。On the Day Project(オン・ザ・デイ・プロジェクト)は、戦争などの歴史的な事件がおきた同じ日付に、日の出から日没まで現場を接写した約5,000枚の写真を貼りあわせ、巨大なフォト・レリーフをつくりあげる作品です。
いずれも地元住民によるボランティアと共同で製作され、展示後はゆかりの地で焼却、あるいは切り分けて参加者に配られます。消滅することで、より強く記憶に焼きつけられること。物質としての作品よりも、その過程で生まれる対話と交流こそが、むしろ作品の本質なのです。
今回、世界各地で行われたプロジェクトから主要な5作品を紹介するとともに、滋賀県立近代美術館では「OHKA-43b」、鳥取県立博物館では「SUISEI-43」という、それぞれの地域に関係のあるZERO Projectの新作を公開共同製作します。
第二次大戦体験者の高齢化を考慮して、ZERO Projectについては、2009年までで一旦完結をみる予定です。タイトルの”ZEROs”は西暦2000年代をあらわすと同時に、複数のZERO Project、あるいは参加者それぞれの記憶が重なり合い、ひとつの作品体験へと結集していくさまを象徴しています。本展が世代や立場を超えてともに語り、考える機会となれば幸いです。