日本人にとって、フランスが特別な場所だった時代がありました。美術の世界でも事情は同じ。ふたつの大戦にはさまれた1920年代から30年代にかけて、数多くの日本人画家がパリに渡っています。
その中で一番有名なのは藤田嗣次。一躍エコール・ド・パリの寵児となりました。そして藤田の後には、成功を夢見て藤田の後ろ姿を追いかける若者たちがいました。夢潰えて異邦に消えた画家や、生活のために慣れない日本画を描き続けた画家もいます。一方では、あたかも芸術の聖地を巡礼するかのようにパリを訪れた日本画家がいて、エコール・ド・パリの喧噪を避けて、フランスの寒村に沈黙を守り続けた画家もいます。美術留学生たちの存在も見逃せません。「芸術の都パリ」に学んだ彼らは、次々と新しい美術思潮を持ち帰り、日本の美術界に新局面を切り開きました。
この展覧会では、エコール・ド・パリの名品と、あこがれの地で全盛期のエコール・ド・パリを目のあたりにした日本人画家たちのさまざまな思いや足跡をご紹介します。