駒井哲郎(1920-1976年)は、浮世絵以来の木版画が主流を占めていた版画の世界に、銅版画を着実に根付かせた版画家です。絶えず実験的な工夫を懲らしつつ、銅版画の持つ可能性を追求し続けました。「黒と白の造形」のなかに、彼独自の深い詩情を刻み続けたのです。記憶と想像力と、日常的な視覚が絡み合いながらイメージを織りなし、黒一色の奥に無限の色彩をたたえています。緻密な線刻による抒情あふれる幻想的な作風が、高く評価されています。
中林忠良(1973-)(東京芸大教授)は、駒井を師とし、同じく銅版画の持つ可能性を追求している版画家です。腐食銅版画によって白黒の細やかなテクスチュアをもつ作品を数多く制作しています。
今回の「師弟みくらべ2」では、師匠の駒井哲郎と弟子の中林忠良の作品を見比べることで、共通点や違いをご覧いただきます。抒情あふれる幻想的な銅版画の世界を心ゆくまでお楽しみください。