26歳の時にフランスにわった藤田嗣治(1886-1968)は「乳白色の肌」の裸婦画を描き、パリの寵児となりました。「パリの画家たちの中でもっともパリジャン」であると言われるほどにパリに溶け込み、晩年にはフランス国籍を取得しています。一方20歳でパリに出たアルベルト・ジャコメッティ(1901-65)は、戦争中に一時故郷スイスに戻ったものの、生涯の40年余りをパリで過ごしました。藤田もジャコメッティも、かけがえのない街としてパリを愛し慈しんだ美術家だと言えるでしょう。この二人は共にパリをモチーフとした挿絵本を制作しています。ジャコメッティは毎日のように行き来していた通りやカフェ、アトリエなどを素早いタッチによりモノクロームのリトグラフに収め、藤田はオペラ座やパレ・ロワイヤル、シャンゼリゼ通りなどセーヌ右岸の名所を織り交ぜながら、様々な風景や風俗を独特の繊細な描写で銅版画に表しました。
この展覧会では、藤田とジャコメッティが愛しんだパリの街を紹介しながら、二つの挿絵本に納められた版画約70点を展示します。二人は一体どのような場所を描いたのでしょうか。作風は全く異なりますが、それぞれにパリの情緒や雰囲気を描き出しています。作品を鑑賞しながら、パリを旅する気分になっていただければ幸いです。なおこの展示は3期にわけて展示替を行い、毎回異なる作品を出品します。
会期
2006年9月9日(土)~10月9日(月祝) 第1期
2006年11月18日(土)~12月24日(日) 第2期
2007年1月5日(金)~2月18日(日) 第3期