近世の城郭は、城下町の人々にとってまさに町の象徴でした。その多くは明治維新以後取り壊されてしまいましたが、近年各地で復元が試みられています。日本最大規模の江戸城については、徳川家康の関東入封以前の様子を描いた「長禄年間之江戸略図」、明暦の大火前の「江戸城天守閣図」や、取り壊し直前に撮影された「旧江戸城写真帖」(重文)などによって失われた江戸城の姿を再現します。また奥絵師・狩野晴川院(養信一七九六-一八四六)らの手になる華麗な「江戸城障壁画下絵」や、その制作過程が知られる晴川院自筆の「公用日記」などを紹介します。さらに、全国各地の特色ある近世城郭の構造を、彩色の絵図や古写真によって通覧します。