旭川市在住の現代木彫作家・板津邦夫(1931~)は、札幌市に生まれ、東京芸術大学彫刻科で石井鶴三に学びました。1956年、同大学彫刻専攻科を修了し帰郷。61年からは長年にわたって北海道教育大学旭川校での後進の指導にあたりました。
板津が本格的に抽象木彫に着手したのは旭川に移った61年以降のことです。早くも65年には自由美術協会展で第1回自由美術賞を受賞し、全国的にも注目を集めました。以後今日まで純生展や道展、自由美術展(2000年退会)、さらには「北海道の美術」展(道立近代美術館)や「北の彫刻展」(札幌彫刻美術館)をはじめとした各種の企画展やグループ展、個展等で多くの作品を発表し続け、常に第一線の作家として活躍してきました。また、道内の抽象木彫の草分け的存在としてその発展に大きな役割をはたしてきました。
木の質感を生かした板津の作品は、北の自然や風物、人間などをテーマとし、生命感をたたえたものやシンボリックなもの、機知に富んだものなど多様でさまざまなすがたや表情をみせています。こうした抽象木彫の数々には板津の奥深い知性とすぐれた造形センスが示されており、作品を見る者に豊かなイメージを喚起させてやみません。
本展は、板津の初期から今日まで約50年間にわたる制作の軌跡をたどる初の大規模な回顧展であり、代表的な彫刻作品約60点とともに素描や版画、陶芸作品なども併せて紹介します。この機会に魅力あふれる板津邦夫の造形世界を心ゆくまでお楽しみください。