大正時代から昭和前期は、創作版画が全国的に普及した時代でした。「自画自刻自刷」を旨とする木版画を自己表現の手段とする創作版画運動は盛り上がり、創作版画協会の結成、帝展の版画部門設置など気勢を挙げていました。これに応じるように、全国の青年達は展覧会へ出品し、相次いで創刊された雑誌に熱心に投稿し、また各地で版画同人誌が生まれ、空前の版画ブームが起こったのです。愛媛でも若者達が版画制作へと情熱を傾けていき、中央へ進出する版画家が登場し、戦前戦後を通じて活躍しました。
今回は、愛媛出身の版画家、畦地梅太郎(1902~1999)・石崎重利(1901~1996)・木和村創爾郎(1900~1973)・中尾義隆(1911~1994)の作品を展示します。彼ら4人の作品によって愛媛の版画史をたどるとともに、近代日本版画史における最も豊かな時代をうかがうことが出来ることと思います。
木版画は、年賀状に使われるなど、私たちにとっては子どもの頃から馴染み深い表現の一つです。現在のように広く親しまれるように至った木版画の黄金時代に思いを馳せてみませんか。