新潟市美術館の建物を設計した前川國男(1905-1986)は、20世紀の日本を代表する建築家です。
前川國男は新潟市学校町に生まれ、東京帝国大学工学部建築学科を卒業後ただちにフランスへ渡り、近代建築の世界的主導者ル・コルビュジエに師事。2年後に帰国してからは、アントニン・レーモンドの設計事務所に勤め、1935年に独立しました。
前川は、建築技術の近代化や、耐震性の向上、高温多湿な気候環境への適応といった、日本建築界が抱えていた様々な問題に徹底して取り組み、とりわけ、日本相互銀行本店(1952)、神奈川県立図書館・音楽堂(1954)、晴海高層アパート(1959)、京都会館(1960)、東京文化会館(1961)、埼玉県立博物館(1971)、東京海上ビルディング(1974)など、戦後の日本建築史にのこる数々の作品によって知られています。また、前川は一貫して「人間の建築」を唱え、時流や権力、営利、悪徳に屈しない、建築家としてのあるべき姿を、厳しい実践と言葉によって世に示し続けました。
新潟市美術館では初めての建築をテーマとする今回の展覧会は、郷土の生んだ偉大な建築家の生誕100年・没後20年の節目を機に企画、開催するもので、主要な作品約70点を選び、建築模型や手書きの設計図、写真などにより、半世紀余におよぶ前川國男の仕事を振り返ります。