「世界人権宣言」は第2次世界大戦終結後の1948年に、国際連合第3回総会で満場一致で採択された。だが、すでに半世紀を経た現在でも、その精神に反して、世界各地で貧困、差別、政治的迫害等に苦しむ人は多い。
営々として築かれた人類の歴史のなかで、先達たちの英知と努力により、未知が究明され、人類の進歩がもたらされ、貴重な文化が蓄積されてきた。にもかかわらず現代は、核開発競争による平和の危機、貧富の差をはじめとするさまざまな人間的不平等、社会と科学の発展が一方においてもたらした環境汚染、エネルギーや食糧問題の不安等々、解決を余儀無くされている問題がひしめいている。
今こそ国家、人種、宗教を越え世界のあらゆる人々が同じ人間として平等に扱われ、その自由を確保されるより平和な世界を築くため、改めて「世界人権宣言」の意味を考え、さらに多くの人々がこの宣言について考える必要があるのではないでしょうか。また、美術が社会とどう関わりを持てる可能性があるのか。こんな課題を「いのちを考える」企画のテーマに据えている。
殊に人生の出発点に立ち、未来に大きな可能性を持つ若い人たちにその機会を与えることの意義は大きいと考える。本展は、これからの人生を歩む若者や子どもたちが、生きることの本当の意味を問い、大きく明日をひらくことを期待して、市内の中学生たちが真摯に「世界人権宣言」をアートでもって表現するワークショップから展覧会にまで繋げる試みの企画である。
なお「いのちを考える」シリーズは2001年から始まり、地元中学校の教育研究会美術部会の先生方と美術部の生徒たちに当美術館の3者によるコラボレーションの取り組みでもある。