滋賀県立近代美術館では7月8日(土)から9月18日(月・祝)まで「イサム・ノグチ-世界とつながる彫刻-展」を開催します。国際的に活躍した彫刻家として、またインテリア・デザイナーとしても人気を博しているイサム・ノグチの活動の全貌を紹介する展覧会です。
イサム・ノグチは、詩人・野口米二郎とアメリカ人の母、レオニー・ギルモアの間に、1904年ロサンゼルスに生まれました。幼少期を日本で過ごした後、単身アメリカに渡り、高校卒業後、コロンビア大学医学部予科に進みますが、在学中にイタリア人彫刻家に才能を見出され、肖像彫刻家として頭角を現します。しかしモダン・アートに関心を寄せていた青年ノグチは、折からニューヨークで開催されたブランクーシの個展を見て、強い衝撃を受けます。そしてグッゲンハイム奨学金を得て、1927年にパリに留学し、ブランクーシのもとで、抽象彫刻の原理と石彫の方法を学びます。その後、一度帰国しますが、1930年には北京で水墨画の技法を学び、翌年には来日して、京都でやきものや石庭など伝統的な日本文化に触れています。
イサム・ノグチのアイデンティティー(帰属意識)は、常に日米の間で揺れていました。第二次世界大戦中には、「二世」と見なされ、困難な時期を経験します。また、戦後ニューヨークの美術界で成功を収めながらも、世界放浪の旅に出立し、世界各地の聖域や遺跡を訪ね歩きました。これはいわば自分探しの旅であり、国籍や民族の違い、歴史を越えて、人類の精神の根源にある共通分母を探求する試みでした。
本展では、こうしたノグチの彫刻観の展開を、「顔」「神話・民族」「コミュニティーのために」「太陽」という4つのキーワードから分類し、様々な素材による彫刻(金属彫刻、陶彫、石彫など)と模型、舞台セットなど72点の作品を通して、その活動の全貌を捉えようとするものです。このうちモダン・ダンスの先駆者、マーサ・グラハムのために制作した舞台セット《暗い牧場》は、日本初公開で、初演時の映像とともにご紹介します。
彫刻は、人と社会を結びつけ、人と周囲の環境に調和をもたらすと信じたイサム・ノグチの作品は、心に響く豊かなメッセージを秘めています。またこの展覧会のために国内外から集められたイサム・ノグチの作品が、日本初公開の作品まで含めて一堂に紹介される機会はめったにありません。この貴重な・・・