鮮やかな色遣いで、風景をはじめ、人形やアジサイ、桃といった親しみやすい作品を描いた洋画家、鈴木信太郎(1895-1989)。八王子の生糸を扱う裕福な商家に生まれた鈴木信太郎は、家業を継ぐ跡取り息子として育てられますが、病気のために足が不自由になり、絵画の道に進みます。杖や車椅子を手放すことのできない身体でありながら、絵のモチーフを求めて全国各地を旅し、戦前から二科会を舞台に活躍しました。1955(昭和30)年、仲間とともに二科会から独立して一陽会を設立した後も、生涯旺盛な創作意欲は衰えることを知らず、93歳で亡くなりました。油彩や水彩作品を制作したほか、数百を数える本の装幀やお菓子のパッケージなどの商業デザインも手がけ、没後15年以上たった今出も、さまざまな場面でその仕事を見かけることができます。
そごう美術館は、戦前の代表作をはじめとして、鈴木信太郎の作品を100点以上収蔵しています。亡くなった翌1990年に行われた遺作展以来、久しぶりの開催となる本展では、当館のコレクションのほか、初公開となる作品を含めて、初期から絶作までの油彩画およそ100点で、80年近い鈴木信太郎の創作活動を振り返ります。また装幀や挿絵の仕事などの参考資料もあわせて展示し、その全貌をご紹介します。待望久しかった鈴木信太郎の回顧展で、心なごむひとときをお過ごしいただけることでしょう。