世代を超えて少年少女たちの夢を育て、魅了し続けた画家・小松崎茂(1915-2001)。
彼の類ない豊かな想像力は、少年ヒーローが活躍する絵物語をはじめ、臨場感みなぎる戦記物やSF未来物、プラモデルの箱絵など多彩な分野で発揮されました。
幼い頃から絵を描くことが好きだった小松崎は16歳で日本画家に師事しますが、やがて挿絵画家に転向。昭和13年から新聞連載の挿絵を手がけるようになり、迫真の戦闘場面を描いた科学雑誌「機械化」で画才を開花させました。戦後は「冒険活劇文庫」や「おもしろブック」などの少年雑誌に《地球SOS》や《大平原児》などの代表作を次々と発表し、山川惣治と並ぶ絵物語作家として一世を風靡しました。絵物語の時代が去る頃には「週刊少年サンデー」や「週刊少年マガジン」などの表紙や口絵で活躍する一方、戦車や戦闘機、
《サンダーバード》などのプラモデルの箱絵を数多く描き、テレビ全盛期の昭和40年代には、《ウルトラマン》や《マジンガーZ》などのキャラクターのイラストレーションを手がけました。また、豊富なイマジネーションを活かし東宝の特撮映画「地球防衛軍」「海底軍艦」等のメカ・デザインやイメージ・ボードにも参加しています。そして晩年は松本徽章工業のメダル関連の原画、平成を迎えてからも音楽CDのジャケット、ゲームソフトなどの新たな仕事に挑むなど、まさに生涯現役を貫きました。戦前から平成まで長きに渡り、その時代に合わせて活躍の舞台を広げた彼の画業は、今もなお色あせることなく幅広い年代層に愛され続けています。
本展では、初公開の初期日本画やスケッチをはじめ、絵物語や口絵の原画、プラモデルのボックス、メカ・デザインを提案した特撮映画関連資料など600余点一堂に展示します。昭和を代表するアーティストとして、彼が残した膨大な作品は現在の芸術文化にも影響を与えました。その小松崎茂の全貌に迫ります。