史跡と景勝の地、山形県山寺に設立された山寺・後藤美術館は、魅力的で特色あるコレクションで知られています。同館が所蔵するヨーロッパ絵画から、名品約70点をご紹介します。
太陽王ルイ十四世の時代、フランスはヨーロッパの政治、文化の中心地となりました。王侯貴族の求めに応じて数々の壮大な歴史画や華やかな肖像画が描かれ、宮廷を彩りました。また、美術の権威を高めるべく設立され、美術教育機関としての役割を担ったアカデミーは、理想的な美の表現を追及してきました。19世紀半ばに入ると、アカデミーの規範や急速に近代化する都市生活を離れて、田園風景や農村の暮らしを詩情豊かに描くバルビゾン派の画家たちが登場します。
本展では、18世紀ブルボン王朝の優美を伝えるロココから19世紀のアカデミスム、そして、コロー、ミレー、ルソーらバルビゾン派の傑作を中心に構成されます。さらに、周辺のヨーロッパ諸国で制作された珠玉の名品がこれに加わります。ドラマティックなバロック様式によるスペインの宗教画、みずみずしい自然をとらえたオランダの風景画、そして、繊細な描写が際立つイギリス絵画など、一つ一つの作品が、画家たちの確かな技巧と、それぞれの時代や地域性を伝えてくれます。本展がヨーロッパ美術の輝かしい伝統にふれる機会となれば幸いです。