国立国際美術館では、中之島へ移転する前の万博記念公園時代、現代美術のこれからを担う中堅・若手作家による「近作展」をたびたび開催しました。今回の三つの個展は、かつての「近作展」を三つ同時に開催するような企画になります。
年長の今村源(1957年生まれ)は、日用品に巧みに手を加えたオブジェを制作するとともに、近年はアルミニウムのパイプをつなげて浮遊感あふれる空間を作り出しています。須田悦弘(1969年生まれ)は、植物を精巧に造形した木彫で知られますが、作品を古美術と並べて見せたり、思いがけない場所に設置するなど、作品の置かれる空間との関係を慎重に吟味した仕事を繰り広げています。最も若い伊藤存(1971年生まれ)は、刺繍という手法を用いて特異な時空表現を生み出すと同時に、その糸から紡ぎ出される世界をアニメーション作品にも展開し、注目を集めています。
この三人は、いずれも一般的な意味での絵画や彫刻の約束事に縛られることのない、きわめて自由な世界を展開している美術家です。通常の企画展のように特定のテーマに基づいて選ばれたわけではありませんが、そのユニークな個性の偶然の出会いのなかに、どこか緩やかにつながる組み合わせの妙が感じられないでしょうか。
たとえば、須田悦弘の植物が葉や花の部分に鮮やかに形にしているとすれば、今村源の設置作品は、植物の茎や葉脈が成長し、増殖し、拡張する姿を想起されます。一方、伊藤存の刺繍は、あたかも普段は見えない植物の根のからまりをその裏面に隠す、不思議な質感の線描とも言えましょう。
地下三階の広い展示室を三分割して、新作と近作を中心に、それぞれの作品が有機的につながり、かつ互いに共鳴しあう展示空間を演出します。