光と影の繊細なコンビネーションによって表現される影絵を芸術として広く浸透させた影絵作家の第一人者が藤城清治(ふじしろ せいじ)です。絵本、雑誌など出版物のほか、天気予報の背景、薬品のCMなどテレビで紹介されるとともに、鳥取夢みなと博覧会でも人気を呼んだ藤城の影絵は、一度はご覧になったことがあるのではないでしょうか。
1924年東京に生まれた藤城は、慶応義塾大学在学中に見たジャワ島の影絵人形劇に心を奪われ、影絵の制作を始めました。以後、『暮らしの手帖』や『中央公論』で長年にわたり影絵の連載をする中で、白と黒の世界から、豊かな色彩を加えた世界へと変貌を遂げ、今まで誰も作り上げたことのなかった、独自の世界を生み出します。その後も旺盛な創作活動で光と影の美しさを追求し、80歳を過ぎた現在も童話の世界や郷愁を誘う情景、こびとや動物たちの愛らしい姿などを、幻想的な色彩のシルエットで描いた影絵作品を通じて子どもから大人まで幅広い年齢層の人々に夢を送り続けています。
本展は、鳥取県の神話をテーマにした作品をはじめ、戦後間もない初期のモノクロ作品から最新作まで大作を中心に約100点を選りすぐり、半世紀以上に及ぶ影絵創作の軌跡を振り返る本格的な展覧会です。作家自らが展示構成を行った展覧会場で、印刷や映像とはまた趣の異なる、藤城ワールドを存分にご堪能いただけることと思います。