画家はなぜ家族をモデルした作品を描くのでしょうか?家族とは画家にとってどんな存在でしょうか?大正から昭和戦前期に至る家族像を見渡すと、子供を中心とした母子像や愛情に満ちあふれた団らんの光景、家族をいとおしむ視線の感じられる作品が多くあります。
また、戦争中に自分も家族も明日の命が保証されない状況の中で、家族像を制作し続けた作者もいました。そうした作品からは制作された当時の世相や風俗のみならず、作者の家族観や人生観など様々な背景をうかがうことができます。
愛情に満ちた家族像は昭和の戦後にも引き続き描かれますが、一方で家族をテーマとしながらも孤独感を表現した家族像が多くみられるようになります。その背景には近代以降の家族の形が家名や財産を受け継ぐ「家」から、単に親と夫婦と子供からなる「家族」、さらに夫婦を子供だけの「核家族」へと変化してきたことが理由としてあげられます。
昭和後期から現在に至る家族像にも、こうした家族観が反映されることとなったのですが、「核家族」よりもさらに単位の小さい「個」という単位まで行きつきながらも、そこには逆に切っても切れない家族との関係を自覚し、新しい共生のかたちを模索する様子をうかがうことができます。
本展では、洋画、日本画、版画、彫刻、写真などの作品約100点により、さまざまな家族像を紹介いたします。時代を追って変わっていく家族像、逆に変わることのない家族の普遍性について思いめぐらせる機会をなれば幸いです。