この展覧会では、伝統工芸の技術を忠実に守りながら独自の道をひらき、近・現代日本の工芸界に大きな足跡を残した秋田県出身の工芸家たちをご紹介します。秋田市出身の関谷四郎(1907-1944)は鍛金作家河内宗明に学び、秋田の銀線細工を通して養った感性をバックボーンとして、金属による造形美を追求しました。特に接合せの技術に優れ、人間国宝に認定されています。同じく秋田市出身の佐々木英(1934-1984)は、正倉院宝物にもみられる螺鈿細工の技法を工夫し、独自の感性で「彩切貝」という技を完成させ、漆の美をより豊かなものとしました。湯沢市(旧稲川町)出身の古関六平(1918-)は、地元・川連と会津で漆芸を学びました。伝統的技法をもとに、新素材の開拓や色漆の自在な表現を試みるなど、漆工芸に示した新しい世界は多くの注目をあつめています。
伝統の技を研ぎすまし、さらに創意と工夫をこらして独自の美を追求した匠たちの作品をご堪能ください。
<接合せ はぎあわせ>
鍛金の中で最も難しいといわれる技のひとつで、種類の違う金属を銀ろうなどで接合し、さらに鎚打って成形する技法です。金属によって膨張率などが異なる為、成形までにその性質に応じた処理が不可欠で、緻密な計算と経験、熟練の技が必要とされます。
<彩切貝 いろきりがい>
0.08ミリのごく薄い貝片の裏に金銀箔をはり、さらに細片に切りわけて、一つ一つ押していく技法。貝の種類や裏打ちする箔も金、青金、銀と使い分けて、微妙な光の表現を可能にしました。彩切貝という呼び名は、佐々木英自身がつけたものです。