板橋区立郷土資料館は、板橋区高島平地名発祥の人物で江戸時代後期の西洋砲術家、高島秋帆に因む特別展を数回実施してきました。今回は「江戸の砲術」と題し、今日に残る江戸時代の砲術伝書によって和流砲術の特徴とその鉄砲、高島秋帆が導入した西洋砲術の伝書とその流布状況を紹介し、江戸時代を通じた日本砲術史の流れをたどります。
和流砲術は、戦国期に活躍した鉄砲師が江戸幕府と共に砲術師としての地位を得て、自己の流派を確立、秘伝書として鉄砲術を教授しました。江戸初期には十から二十流派ほどだったものが、江戸中期から後期にかけては四百流派に及んだともいわれていますが、その多くは伝書などの資料が散逸して実態が不明なままです。今回は土浦藩関流砲術・江戸の砲術家井上貫流左衛門、大垣藩の田付流砲術の伝書や鉄砲を紹介します。
一方の西洋砲術では、長崎の地役人であった高島秋帆が西洋の砲術を導入するまでの兵学書翻訳の実態を踏まえ、高島秋帆が確立した西洋砲術の伝書の形式とその伝播を、韮山代官江川太郎左衛門や田原藩村上範致の資料などでたどります。