彫刻は、現実の空間と強くかかわる表現です。それゆえ現実の空間との接点とも言うべき作品が設置される《場》と作品を場としての空間に形作る《物質》に対する思考の在り方は、彫刻の存在にかかわる最も重要な問題であると考えられます。《場》に対する考察を通して、彫刻は作品をとりまく場(空間、環境、社会)との関係性のなかで成立していることが明らかとなり、そして作品を空間に形作る《物質》に対する探求は、フォルム(形)やヴォリューム(量塊)といった彫刻用語に付け加えて、作家と物質の関係から浮上してくる記憶や時間という彫刻の根源に差し迫る新たな視点を導きます。彫刻とは、私たちが生きている現実空間-特に《場》と《物質》との関係を通して、作家の身体と精神によって見い出された世界に対するある眼差しから生み出されるものではないでしょうか。
本展は、このような彫刻の在り方にかかわる核心的な問題に深く関与する作家として川島清、土谷武、若林奮をとりあげ、三人の作家の作品による展示空間-彫刻空間を通して、あらためて彫刻の本質-その根源的な存在の有り様について考えようとするものです。