スペインが誇る20世紀彫刻の巨匠、エドゥアルド・チリーダ(1924-2002)の国内初の本格的回顧展を開催いたします。
バスク地方のビスケー湾に面したサン・セバスティアンに生まれたチリーダは78歳で他界するまで、鉄をはじめ石やテラコッタによる緊張感に満ちた力強い抽象彫刻を、ひたむきな情熱をもって創作し続けました。
チリーダは、スペインをはじめとする欧米の各地に設置された屋外彫刻によって知られています。彼の作品はしばしば規模も大きく、素材の特性を強調するものですが、周囲の環境と対峙するのではなく、環境と対話するという性格を宿しています。作品は物のかたまりとして屹立し、周囲の空間や内側にとりこまれた空間も作品と同等の比重で扱われており、対話するという性質をそこに見出すことができるでしょう。そこには雄大さや抱擁感、時にはほのかなユーモアさえ漂っています。それらは自然や環境への深い思索と敬虔な姿勢に裏付けられた作品群といえるでしょう。
チリーダの作品はその規模の大きさゆえ、これまで日本ではまとまった形では紹介されていませんでしたが、今回の展覧会は彫刻家の故郷サン・セバスティアン近郊にあるチリーダ=レク美術館の全面的な協力により、鉄やスティールなどによる彫刻、テラコッタによる<土>のシリーズ、紙によるレリーフ彫刻ともいうべき<重力>のシリーズ、そして版画など、約80点の作品群によってこの彫刻家の多面的な姿を紹介しようとするものです。