大村コレクションは、抗生物質をはじめとする天然物有機化学の研究における世界的権威・大村智氏が、独自の価値観や美意識にもとづいて収集した作品群です。それらは、明治から現在に至るまでの国内作家の作品からなり、油彩・日本画・水彩・版画・素描・工芸・彫刻など幅広い分野に及んでいます。なかでもこの数年、氏の熱心な収集対象となっているのは女子美術大学卒業生の作品です。
女子美術大学は、女性への美術教育が顧みられない時代の中で、女性が美術を学ぶ場を設け、ひいてはその自立や社会的地位の向上に貢献することを創立の趣旨とし、1900年(明治33年に開校しました。
1997年(平成9)年、女子美術の理事長に就任したことを契機とする大村氏の収集は、大学の百年にわたる教育活動ならびに卒業生の制作活動を顕彰しようとするものです。そのため、収集作品は、2002年(平成14)年以降、各地で積極的に展観されており、当館における開催もその活動の一環となります。
本展では、大村コレクションに含まれている女子美卒業生80名、200点余の作品の中から、1949年までに卒業した27作家の作品約40点を展示いたします。
主な展示作品は、日本画では、片岡球子(1905~/文化勲章受章・日本芸術院会員)《富士》をはじめ、郷倉和子(1914~/文化功労者・日本芸術院会員)や堀文子(1918~)らの花鳥をモチーフとした色彩豊かな作品。また、油彩画からは、三岸節子(1905~1999/文化功労者)による華やかな花の絵のほか、日展で活躍した森田元子(1903~1969)の描く女性像、身近な女性や子供を穏やかな色調で描き出した深澤紅子(1903~1993)や優れた描写力を持ちながらも病により寡作を余儀なくされた桜井悦(1910~1989)の人物画などを紹介します。他に、工芸作品からは、皮革工芸の第一人者として高く評価されている大久保婦久子(1919~2000)/文化勲章受章・日本芸術院会員)の作品も出品します。