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世界的に活躍する現代美術家である桑山忠明は、1932年に名古屋に生まれ、東京芸術大学日本画科を卒業した後、1958年にアメリカに渡って以来、現在まで幾何学的な抽象絵画から「ピュア・アート(純粋美術)」へと独自の芸術を一貫して探究してきました。
1960年代に、日本画の伝統を受け継いで、筆触を残さない平坦なモノクローム(単色)の色面パネルを単純に構成した絵画を確立すると、1970年代には、エア・ブラシを使用してメタリック(金属的)な色彩をペイントすることによって、絵画的な表現を極限まで排除して、まるで工業製品のような絵画を制作しました。「観念も思想も哲学も理屈も意味も、また画家の人間性さえも私の作品のなかには入っていない。アートそのものがあるだけである。ただそれだけなのだ」という桑山の言葉には、その芸術観が明解に語られています。1980年代には、ペイントされる素材がキャンバス(平面)からハニカムボード(立体)へと変化するとともに、一時的に筆触が復活して、絵画の物質性が強調されるようになり、1990年代に入ると、アルミニウムやプライウッドなどの産業資材が使用されるようになって、より物質性が高まっていきます。同時に、個別の絵画作品から基本的な単体としての「絵画」を反復的に展示することによって生まれる空間へと次第に展開して、現在では空間そのものを構成するプロジェクトを世界各地で行なっています。
今回の「桑山忠明ワンルーム・プロジェクト2006」は、愛知県美術館と名古屋市美術館の共同企画によるもので、それぞれの美術館の展示室(ワンルーム)の空間が新たに創出されます。人工的な物質でありながら人工性を超越した「絵画」が無限に反復される空間は、崇高な美しさと静けさを湛えて、私たちを迎えてくれることでしょう。桑山忠明の「ピュア・アート」の世界に、どうぞご期待ください。