神奈川県立近代美術館は、このたび、横浜在住の版画収集家として知られた眞下家から、約200点に及ぶ日本の現代版画の寄贈を受けました。その版画の主な傾向は2つに分けられます。
ひとつは、銅版画であり、もうひとつは、木口木版画であります。銅版画は、おもに小林ドンゲ(1927-)や斉藤カオル(1931-)、二見彰一(1937-)、坂東壮一(1937-)といったキャリアを積んだ人たちの作品です。女性をなまめかしく描き出した斉藤カオルのメゾティント、さらに約50点の作品で眞下コレクションの柱となっている二見彰一のエッチングなどは、銅版画部門の注目すべき作品となっています。二見彰一は、音楽のテーマを好んで取り上げ、青や茶の色調をうまく用いたアクアティントによって、二見ならではの抒情的な世界を創造しています。また、木版画の中でも木口木版画という技法の作品をまとめて集めたことも、眞下コレクションの大きな特色のひとつです。板目木版画と異なり、木の切り口である木口を彫って細かい描写を可能にしたのが木口木版画です。1977年に結成された木口木版画の作家グループ「鑿の会」で活躍した柄澤齋(1950-)、日和崎尊夫(1914-1992、山本進(1951-)、栗田政裕(1952-)、小林敬生(1944-)といった人たちの作品が収集されています。例えば柄澤齋による作品、とくに想像力を働かせて過去の芸術家の肖像を描いた肖像シリーズやミステリアスな雰囲気をたたえた「死と変容」のシリーズの中の作品は。木口木版画特有の硬質なイメージを見事に表しています。今展では、眞下コレクションによる銅版画と木口木版画の中から約65点を精選して、そのコレクションの真髄をお見せしたいと考えております。また、今展では、2005年度に購入、寄贈された新収蔵作品もあわせて紹介します。篠原有司男、西雅秋など11人の芸術家の作品を展示する予定でおります。