絵画を鑑賞する際に、複数の作品を見くらべることで個々の作品の特徴がより際立つことがあります。本展では、この「くらべる」ということに注目し、「同じモノを描いた日本画」を二点一組で展示いたします。
たとえば横山大観作「鼬」と橋本関雪作「秋圃」は、ともに「いたち」を主題とした作品です。大観のいたちは単純化されていて、その丸い目は愛らしくひょうきんな趣があり、親近感あふれる姿に心引かれることでしょう。それに対して、関雪作品の方では写実的に描かれており、体を起こして周囲に注意をはらう様子からは野生の本能がうかがえます。つまり、描く対象への視点や表現方法そして画家の個性などがそこに加えられることで、同じ「いたち」でも異なる趣をもち、それぞれの良さや特色のある作品となっているのです。また比較することによって、個々の作品の魅力がいっそう浮き彫りになるとも言えるかもしれません。
今回の出品作のなかには、この他にも「りす」「鷹」「牡丹」をはじめとした動植物、「富士山」などの自然や景色、「寿老人」「傘に美人」といった伝統的主題の組合せがあり、あわせて21種類42点の作品を展示いたします。絵を「くらべる」ことの面白さを充分にお楽しみください。