滋賀県立近代美術館では5月27日(土)から6月25日(日)まで「ニューヨーク60年代街はキャンバスだったあの頃 画家泉茂の写真展」を開催します。画家・版画家として活躍した泉茂が60年代初頭のニューヨークの街角で撮影した写真を紹介する初めての展覧会です。
泉茂(1922~1995)は大阪市に生まれ、大阪市立工芸学校(現在の大阪市立工芸高等学校)を卒業した後画家を志します。戦後はデモクラート美術協会の結成に参加し、画家としての活動をひろげながら版画制作にも手を広げ、ユーモアを秘めた叙情的な独特の作品で国際的にも高い評価を得ました。1959年から1963年にはニューヨーク、その後はパリに1968年まで滞在し制作活動を行っています。
60年代初頭のニューヨークでの滞在時期は、泉茂にとって画風のおおきな変遷期にもあたり、シュールレアリスムの影響を受けたそれまでの叙情的な画風から抽象的で緻密な作品制作へと移る契機となった重要な時期です。泉茂は題材を求めてニューヨークで写真を頻繁に撮影しました。ふと人影の途絶えた都会の片隅、ビルの解体現場を撮影したもの、廃車をクローズアップしたものなど、何千枚も撮影されたその写真は画家が対象をとらえる独自の視点を感じさせる力強さに満ちています。しかも泉茂氏の写真作品のうちこれまで紹介されたものはほんの一部であり、今回展示される写真は、ほとんどが未紹介・未公開の非常な貴重なものです。また本展では、写真作品とともに泉茂の絵画や版画作品をも展示し、泉茂の作風の変遷と写真との関連を幅広く紹介いたします。
今までほとんど目にすることのできなかった泉茂の写真作品を一同に展示する本展は、彼の新たな一面を紹介するとともに、ニューヨーク60年代の熱気と写真表現の根源的な面白さを伝えるものとなるでしょう。皆様のお越しをお待ちしております。