東京都現代美術館では昨年から常設展示を「MOTコレクション」と改称し、当館の所蔵品を新たな視点から見つめなおす試みを行っています。
2006年第1期-2期の「MOTコレクション」は1960年代以降の現代美術の紹介を行います。1960年代のポップアートから1970年代の東京国際版画ビエンナーレに出品された版画、1980年代にデビューした日本人アーティストの抽象絵画、そして1990年代のアジアの現代美術、2000年以降に制作された写真や絵画などを中心に展示する予定です。
また特集展示では2名のアーティストに注目し、所蔵品を中心にそれぞれの活動を紹介します。ひとつは吉田克朗による1970年代に制作された版画の展示です。もうひとつは中村一美による1980年代~2000年代に制作された絵画の展示です。
近年新たに収蔵された作品をふくめ、1960年代のポップアートから現在うみだされつつある表現までを展覧することで、現代美術の多様性を感じていただけたら幸いです。
●特集展示1 吉田克朗●
特集展示1では吉田克朗の70年代の版画を取り上げます。吉田克朗は「もの派」の作家として紹介されることが多いのですが、1970年の「第1回ソウル国際版画ビエンナーレ」東亜大賞を受賞するなど、その版画作品は高く評価されています。また、1973年に文化庁海外芸術研究生としてロンドンに滞在し、そこでフォト・エッチングの技法を学び、帰国後数多くのエッチングの作品を制作しました。今回は「もの派」後すぐに始めたシルクスクリーンの作品とロンドン滞在後制作されたエッチングの作品を中心に展示し、版画家としての一面を紹介します。
●特集展示2 中村一美●
特集展示2では中村一美の絵画を取り上げます。当館では中村一美の作品を2点収蔵しており、また数多くの作品が寄託されています。このたび新たに《リクライニング・ブッダ》(1992-3年)の寄託を受けるにあたり、当館のコレクションから、80年代~2000年代までの作品を一覧する機会を設けます。長年にわたる作家の思考や表現の変化をご覧いただければと思います。