1950年代の「実験工房」の時代から現在まで、テクノロジーが拓く新しいアートの可能性を追求してきた山口勝弘(1928~)。美術、デザイン、そして評論、教育といった多彩な領域にわたる活動を回顧する展覧会です。
初期の抽象絵画から、「実験工房」での共同制作作品、山口芸術の原点ともいうべき「ヴィトリーヌ」シリーズ、60年代に始まる多素材の彫刻、空間プロデュース、70年代からのメディア・アーティストとしての展開、そして最新のテアトリーヌ・シリーズまで、資料と併せて約200点を、7つのセクションにわけて紹介いたします。
山口勝弘
山口勝弘は、1950年代初めに結成された、美術家・音楽家・評論家らによる前衛的な総合芸術グループ「実験工房」の中心人物として知られています。彼の実験的な制作は光や映像の使用へと展開し、60年代以降、日本のヴィデオ・アート、テクノロジー・アートの代表作家として多くの国際展に参加。その後も大阪万博(1970)の三井グループ館の総合プロデュースや各地の公共施設、商業施設のディスプレイなど、常に時代に即して芸術と社会の関係を追究しました。
他方で、東京造形大学、筑波大学、神戸芸術工科大学などで教職に就き、表現の多様化に対応して「総合造形」「環境造形」といった新たなカリキュラムによる美術教育活動や、盛んな著述活動に示される文化批評家としての面も見逃せません。1977年から92年までは筑波大学教授として、茨城の現代美術に大きく寄与しました。