「週刊新潮」表紙絵で知られる谷内六郎(1921-81)は、59歳で亡くなるまでの25年間、その創刊号(昭和31年)から毎週欠かさず1336枚の表紙絵を描き続けました。谷内六郎の描く世界には懐かしい日本の暮らしや風景だけでなく、誰もが子どもの時に見たり感じたりした記憶の風景が描かれています。たとえば、暗闇や夕焼けに得体の知れない恐怖を覚えたり、神社の石の狐や大きな木が生きているように見えたり…。こうした子ども時代の体験を、谷内は大人が忘れてはならない原風景として豊かなイマジネーションで描き続けてきたといえるでしょう。
本展は、2006年に没後25年を迎えるのを記念して、谷内六郎の世界を紹介するものです。初期の油彩や水彩をはじめ、「週刊新潮」の表紙絵や同時期の作品、書籍の装幀デザインなどのほか、愛用品や写真類も多数展示し、その軌跡をたどります。出品作品は、初公開作品を多数含む約300点で構成されます。ぜひこの機会に、多くの人に愛され続けた画家・谷内六郎の郷愁にあふれる魅力的な世界をご覧ください。